(2023/10/12更新)
今年こそテント泊したい!
山小屋に気軽に宿泊できなくなったこのコロナ禍において、今年はテント泊で縦走したい!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
縦走はテント泊派の筆者が、テントの種類から選ぶときに重視すべきポイント、おすすめ商品まで紹介していきます。
テントの種類
シングルウォール
テントにはシングルウォールとダブルウォールなるものが存在します。これはテントの壁の枚数を表します。つまり、シングルウォールは壁が1枚、ダブルウォールは壁が2枚ということです。
シングルウォールのメリット
- 軽量
- 設営が簡単、早い
- 悪天候に強い
- フライシートを使用しない分、ダブルウォールよりも重量が減ります。
- フライシートを被せてテント本体と繋げる時間がカットされるので、簡単に素早く設営できます。
- 壁が1枚しかないので、強風時は内側から体で支えれば耐え忍んでくれます。またテント本体にも強度があるため、強い風雨に耐性があります。
シングルウォールのデメリット
- 結露が起きやすい
- 暑い
- 前室がない
- シングルウォールはテント自体に透湿防水性を持たせており、テント内の湿気を外に出してくれる仕組みになっています。ですが、ダブルウォールと比べて外気温とテント内の温度差が大きくなるので、結露ができやすくなります。
- ダブルウォールはテント本体とフライシートの間に空気層ができるためまだ涼しさを感じますが、シングルウォールはダイレクトに外気温を感じるため暑いです。
- 靴の収納場所や調理スペースが取れません。(前室とは、テント本体とフライシートの間にできる空間のことです。)
総合的に見て初心者の方含め、山小屋のテント場に泊まって登山される方にはシングルウォールテントは不向きです。
シングルウォールテントは、少しでも荷物を軽量化したい、設営スペースが限られる、すぐにテントを設営しなければ危ないといったハイレベルな登山やクライミングをされる方向けのテントです。
ダブルウォール
ダブルウォールはテント本体とフライシートの2つを使うことで、壁が2重になっているテントのことを言います。
ダブルウォールは通気を確保するために、テントとフライの2種類の生地を使います。
ダブルウォールのメリット
- 結露が少ない
- 前室がある
- 下の図のように、テント内の気温と外気温の差をフライシートが埋めてくれるため、ダブルウォールでは結露ができにくくなるのです。
2. テントとフライシートの間に空間=前室ができるため、調理をしたり靴を置いたりするスペースができます。
ダブルウォールのデメリット
- 設営に時間がかかる
- 悪天候に弱い
- テント本体を立てた後に、フライシートをテント本体に被せる→繋げる→張り綱をペグダウンという作業があるため、シングルウォールよりも設営に時間がかかります。しかも雨天時にテント設営する場合は、テント本体に雨がしみこまないようにするため、素早くフライシートをかける必要があります。
- ダブルウォールのテントはシングルウォールのテントに比べ、悪天候に弱いです。横殴りの雨が降ると、フライシートの下から雨が吹き込み、テント内部に雨がしみこんでくる恐れがあります。あるいは風でフライシートとテントがぴったりとくっついた状態になり、フライシートにできた結露がテント内に染みこむこともあります。
夏のアルプスで強風時にテントを張って、まさにこの結露でテント内浸水しました(´;ω;`)
またテント本体のフロア部分に使用されている防水生地のせり上がりが低いと、浸水してくることもあります。
寝袋の濡れを防ぐためにも、テントの中に敷くテントマットの使用をおすすめします。
吊り下げ式
テントポールの構造には、吊り下げ式とスリーブ式の2種類があります。
吊り下げ式は上記のイラストのように、テント本体をポールに吊り下げて設営するタイプです。
最近のテントはこの吊り下げ式が多いように感じます。
吊り下げ式のメリット
- 設営が簡単
- 結露に強い
- 設営はポールの端をテント本体の4隅に入れて立ち上げ、あとはテント本体に付いているフックをパチパチとポールに固定していくという方法です。初心者の方でも1度練習すれば、1人でも簡単に素早く設営できます。
- 吊り下げ式ではフライシートをポールに固定することになるので、テント本体とフライシートの間に隙間ができます。そのためテント本体とフライシートの間を空気が循環するようになり、結露ができにくくなるのです。
吊り下げ式のデメリット
ずばり強度が低いことです。
吊り下げ式はフックの部分にピンポイントで負荷がかかるため、スリーブ式に比べて強度が下がるとされていました。
また強風によりフックが外れてしまうといったこともありました。
ですが各メーカーの技術開発により、強風にも強い吊り下げ式のテントもあります。
日本の山岳シーンでの使用を考えられた作りになっているので、過度に心配する必要はないでしょう。
私も吊り下げ式のダブルウォールテントを使用して、アルプス縦走をしています!
テント泊初めてなら、これが一番使いやすいです。
スリーブ式
スリーブ式はテント本体に縫い付けられている袋=スリーブ部分にポールを通し、4隅の穴にポールの端を差し込んで立ち上げます。
私も学生時代はスリーブ式のテント、エスパースを使用していました。
スリーブにポールを通したり、抜いたりするときは、慣れないうちはスリーブ内によく引っ掛かるので、設営・撤収に慣れが必要だと思います。
スリーブ式のメリット
・強度が高い
スリーブ式は生地全体でポールを支えるためポールにかかる負荷が分散され、吊り下げ式に比べて強度が高くなります。
スリーブ式のデメリット
・結露しやすい
スリーブ式ではテント本体とフライシートの間が狭くなるので、空気の通り道が少なくなり、結果的に結露が起きやすくなります。
テント選びで重視すべきポイント
重量
テントを持って山に行く時は、縦走登山をする場合が多いです。
ただでさえ荷物が多くなる縦走登山なので、テントは軽い方が良いです。
キャンプで使用しているテントでもいいよね♪と思われる方もいるかもしれません。
ですが山岳用テントは山での使用を見越して軽量に作られているため、キャンプ用と分けて使用することをおすすめします。
テントは雨や結露で濡れることもあるため、そうなると必然的に重たくなります。
これが重たいキャンプ用テントだった日には、ストレスでしかありません・・・。
居住性
テントを選ぶ際には、居住性も重視してほしいポイントです。
テント泊での縦走登山では持って行くザックのサイズも大きくなるため、テント内でスペースを取り、必然的に居住スペースが狭くなります。
私は友達と2人で使用するために2人用テントを購入しましたが、2人分のザックを置いて、大人2人が横たわるとかなり窮屈です。
3人用にすればよかった・・・
と頻繁に後悔しています・・・。
1人用で使用予定の方も2人用で購入を検討された方が広々使えるので、後々後悔がないかもしれません。
アウトドアショップに行けば実際にテントを立てて入ってみられるので、テントを購入する際は1度購入予定のテントの中に入ってみることを強くおすすめします!
耐久性
山岳用テントは山の強風や雨に耐えられるように、ポールや使用する生地の細部まで高い技術が使われています。
特にアルプスでは強風が吹きつけるサイト場も多いため、耐久性の高いテントが必須です。
山岳用として販売されているテントを選べば、この辺りは問題ないでしょう。
おすすめテント6選
ダブルウォール
モンベル ステラリッジテント
モンベルの山岳用テントで最軽量を誇るのが、「ステラリッジテント」です。
軽く、強く、吊り下げ式による素早い設営が可能になっています。
強度が低いという吊り下げ式のデメリットを解消するために、ポールの交差部分をジョイントパーツで接続することにより、スリーブ式と変わらない高強度が実現されています。
吊り下げ式なので結露はしにくいのですが、テント4隅や入り口のジッパー部分にシームテープ処理がされているため、徹底的に防水がなされています。
ステラリッジのポイントはフライシートが別売りというところ。
自分の好きな色を選べるというのも嬉しいのですが、3シーズン用のレインフライと雪山用のスノーフライを購入すれば、4シーズン使えるテントになるのです!
フライシートが劣化してきたらフライのみ買い替えるということも可能なので、コストパフォーマンスに優れます。
ファイントラック カミナドーム
“日本の山岳環境で思う存分に使い倒せるテントが欲しい。”というfinetrack社の思いが詰め込まれたテントが、カミナドームです。
軽量性、耐久性を高いレベルで実現しているのは言うまでもないのですが、カミナドームのポイントは快適な居住性にあります。
天頂部と底部で弾性の異なる異径ポールを使用し、テントの壁を立ち上がらせることで、広い居住空間が確保されています。
またテントの長辺側に入り口を設けることで、広い前室が確保されています。
2人分の靴を置いてもゆとりのあるスペースができるので、使ったばかりでまだ熱い火器をちょい置きしておくこともできます。
そして私が個人的に感動したのが、収納したときに四角くなることです!
一般的なテントは円筒形になるためパッキングが難しく、どうしてもデッドスペースが生まれてしまうんですよね。
しかしカミナドームは弁当箱型の四角い形に収納できるため、ザック内でデッドスペースが生まれません!
カミナドームもスノーフライが別売りされているので、4シーズン使用も可能です。
MSR ハバハバシールド
日本の山岳用にリニューアルされた「ハバハバシールド」は、メッシュパネルの部分が減って秋山でも使いやすくなりました。
「ハバハバシールド」一番のおすすめポイントは、快適な居住性です。
天頂部でポールが交差することでテントの壁が立ち上がるため、テント内に座った時に広さを感じられます。
快適な大きさがあるのに2人用で1.5kgを切るスペックには、ある秘密があります。
その秘密がフライシートと本体部分のシームテープを失くしていることです。
耐水性を上げる縫製技術で浸水を防ぎ、防水処理には必須のシームテープを使用しなくてもよくなっているんです。
軽量になるのはもちろんですが、経年劣化でシームテープが剥がれてくることもありません。
長年使える仕様になっています。
アライテント SLドーム
日本の老舗テントメーカーであるアライテントが手掛ける「SLドーム」は、軽量性に特化したダブルウォールテントです。
2人用で980gと1kgを切ってしまう軽量性は、業界最軽量クラスのテントになっています。
素材レベルで見直しを行い、本体底には30デニール、本体壁部分には12デニールと、超軽量ウインドブレーカーに使われるぐらい極薄の生地が使われているんです。
それでいてアライテントの英知を結集したフレーム構造で、日本の山岳環境にも耐えうる耐久性も保持されています。
もちろん軽量であるがゆえに他の山岳テントに比べると、耐久性は劣ります。
ですが2人用で1kgを切る軽量テントなら、行動範囲をもっと広げられるでしょう。
NEMO タニオズモ
アメリカのブランドNEMOが日本の山岳環境を想定した作ったテントが「タニ」シリーズです。
2人で寝てもゆったり使えるフロアスペースに加え、雨の日でも換気がしやすいベンチレーション機能で快適性を重視されています。
吊り下げ式で結露がおきにくいですが、さらに嬉しいのがフライシートの壁面をガイラインで本体壁面から離せることなんです。
フライをしっかり張っていたとしても、風が強かったりペグが抜けてしまったりすると、フライがテント本体にくっついてしまいます。
それが原因で結露が起きて、テント内が濡れてしまうんです。
ですがテント本体とフライを細引きでつなぎ、さらにそのフライをガイラインで張ることで悪天候時でも結露を予防してくれます。
日本の山岳環境を考えられたテントに仕上がっています。
おすすめダブルウォールテント比較表
ステラリッジテント | カミナドーム | ハバハバシールド | SLドーム | タニオズモ | |
総重量 | 1430g | 1460g | 1470g | 980g | 1240g |
設営サイズ | 間口210x奥行130cm 高さ105cm | 間口212x奥行130cm 高さ105cm | フロア面積127cm×213cm 高さ100cm | 間口210x奥行120cm 高さ95cm | 間口220x奥行130cm 高さ104cm |
本体収納サイズ | 30×14.5φcm | 8x17x27cm | 46x11cm | 27×21×9cm | 非公開 |
入り口 | 短辺側 | 長辺側 | 長辺側 | 長辺側 | 長辺側 |
ポール構造 | 吊り下げ式 | スリーブ式 | 吊り下げ式 | スリーブ式 | 吊り下げ式 |
価格(税込み) | ¥51,480(フライ含む) | ¥74,800 | ¥99,000 | ¥64,900 | ¥82,500 |
各社webサイト | モンベル | finetrack | MSR | アライテント | NEMO |
テント泊で自由な登山を!
快適な山小屋に泊まるのも良いのですが、自分だけの空間が作れて、自然の音をダイレクトに感じながら眠れるのがテント泊の醍醐味だと思います。
お気に入りのテントを手に入れて、是非テント泊登山を楽しんでみてください!
コメント
大変勉強になりました!僕はアライテントが気になります!
ナイロンポリエステル様
コメントいただきありがとうございます!
是非お店で試してみてください!